スロープの勾配について
スロープが欲しい
「母の足が不自由なので、玄関前にスロープがほしい」
「バリアフリー店舗をつくりたいので、エントランスにスロープがほしい」
今や建物の計画要素に必要不可欠なスロープですが、これがなかなか難しく奥が深い。
実はスロープの法律的な基準と実際の使いやすい寸法が全くことなるのです。
ちゃんと法律通りにつくっているはずなのに上手くいかないなんてこともしばしば。
今回はそんなスロープについてのお話しです。
スロープの法律的な基準
スロープの基準は、いくつかの法律ごとに定められています。
代表的なものは建築基準法とバリアフリー法になります。
建築基準法では最低勾配1/8、バリアフリー法では1/12(推奨1/15)です。
基本的に設計者はこの基準をまもって計画をしていくことになります。
建築基準法 1/8勾配
建築基準法が定める1/8勾配は約7度の急勾配となり、とても車椅子がひとりで上り下りできるものではありません。
上るときは前に進まず、下るときはブレーキが利かずに坂道を滑り落ちる可能性があります。
体が不自由な方にとっては大変危険な勾配です。
バリアフリー法 1/12(推奨1/15)勾配
バリアフリー法が定める1/12勾配は約5度とだいぶ緩やかに見えますが、車いすの自走はかなり重労働です。
人によってはスロープを使用するだけでも息があがることでしょう。
推奨される1/15勾配は約4度となりますので、できるだけこちらを採用してください。
ここから車椅子が問題なく自走できる基準となると思います。
スロープ計画の注意点
ここでスロープ計画の注意点をひとつ。
スロープが緩くなるということは、目標の高さまで上りきる必要長さが長くなるということでもあります。
スロープの勾配を考え無しに緩く作ってしまうと、何度も何度も折り返すようなとんでもなく長いスロープができあがってしまいます。
長い距離を歩かされるのはストレスであり疲れもたまります。
優しい計画を目指していたはずなのに、これでは本末転倒です。
スロープは必要な空間が大きくなりがちなので、建築計画に大きなに影響を与えます。
初期構想からスロープの勾配とスロープ長さの関係をしっかりと考えて計画したいものです。